ウォーターセブンは暑い。セント・ポプラやプッチ、サンファルドに比べるまでもないほどに毎年が暑い。アクア・ラグナがくるという気候の所為か、それとも土地が悪いのか、ウォーターセブンは毎年記録的な暑さが続く。
どこかで蝉が鳴いている。どこかで子供が遊んでいる声がする。ルッチとハットリが暑いと思いながらも買い物をしていそうな気がする天気。アイスバーグとカリファは揃って少し涼しいプッチに出張しているはず。パウリーが借金取りから追われているような声が聞こえるような気がする。フランキー一家が海賊を伸している声が聞こえるような気がする。

カクがわし、昨日が誕生日じゃったんじゃがのう・・・。そんな少し拗ねたような声を聞かなかったら、はそのまま窓の外を見てぼうっとしていたかもしれなかった。





「え、うそ?」




それはこっちの台詞だと、カクは少し思った。まさか、彼女が自分の誕生日を知らなかったなんて、考えてなかった。自分が自意識過剰過ぎた罪?

カラン、とコップの中の氷が動く音が響く。ちりん、とこの間の祭りでと買ったガラス細工が風に吹かれて鳴る。外の音が、あまり聞こえなくなった。
「ほんとに、きのうが、カクさんの、誕生日なの?」
彼女は丸い目を余計丸くさせ、パチパチと瞬きをし、噛み締めるように言った。その様子がまた愛らしい、とカクは頬が緩んでしまう。おまけに、滅多に拝められない私服!いつもの黒い、暑そうな黒いツナギ(おまけにいつも木屑をつけて歩いている)とハンチングではない。ふわふわの白いスカート。
そうしてをずっと見ていたら、別に自分の誕生日のことなどどうでもよくなってきた。けれど、彼女は怪訝な顔をする。
「カクさん?なに笑ってるの?」
「いや、べつになんでもないんじゃ」
「あ、そ・・・。・・・ああ!」
が思い出したかの様に口元を押さえ、少し大きい声をあげた。その声に、今度はカクが目を丸くする。(以上に)
「どうしたんじゃ?」
「わかった。ああ・・・もしかして、あの、昨日の、ブルーノの酒場でのあれって・・・」
「あれか。わしの誕生日を祝ってくれたみたいじゃな」
昨日のブルーノの酒場でのことを思い出す。1番ドックの船大工がみんなで集まって、飲む。それはいつもと全く変わらないことで、ただ違うことは、休みのものも居るのに、全員揃っていたことだ。もそのことには少し疑問を感じたが、酒が飲める、とかそういう理由で来てるんだろうなあ、と勝手に理由付けをして、自分の中で勝手に終わらせてしまった。
アイスバーグとカリファが居る時点で、怪しんでおくべきだった。カクが妙に嬉しそうにしているのも、帰りに大きな紙袋を2つくらい持っていたのも、理由はそれだったのだ。ブルーノから貰ったおいしいフルーツケーキは彼の誕生日ケーキだった!
「な、なんで言ってくれなかったの?」
「お前さん、酔ってそれどころじゃなかったじゃろう?」
「・・・」
はうっ、と押し黙る。じっ、とカクを恨みがましい目で見つめるけれど、カクはただ面白そうに見る。それで?どうした?とでも言いたげに、笑いを堪えているような、そんな顔で。
「私がお酒に弱いのを、知っているくせに」
「そうじゃの、なんせ屋根の上で寝てしまうくらいじゃからの〜」
「・・・」
はまた押し黙る、そしてまた睨む。カクはわははは!、と笑って、の頭をいつもの様に撫でる。は小さな声をあげるけれど、黙って撫でられている。
「すまんすまん、わしが悪かったわい。のう、、謝るから機嫌を直してくれんか?」




は、この瞬間がなんだか嫌だった。
子供が、大人にあしらわれているような、そんな感覚に陥る。身長はすごく違うけれど、カクと自分とは5つも年は離れていない。
?」
どうした?と心配そうに顔を覗き込むカクを、ああ、やっぱり愛しいな、と思ってしまう自分が居て。
うう、と呻いて少し後ろに下がる。自分の顔が少し赤くなったのがわかる。会ってもう随分と経つのに、この人は私を狂わせる。(未だに顔が近くに来ると、赤くなってしまう)(好きだと、自覚してからだけれど)(会った頃なんて、ちっとも赤くなかったのに!)
「・・・カクさんずるい」
「は?」
「ずるい。どうしてそんなに、駆け引きが上手いの?」
小さい頃にはこんな問いかけ赤ずきんちゃんじゃなきゃ、言わないって思っていたけれど、まさか自分がするなんて。
カクはパチパチと瞬きをして、わけがわからないという顔をする。
「か、駆け引き・・・?のう、、わしは今お前さんが言うておることがさっぱりなんじゃが・・・」

「ずるいよ。なんだか私だけカクさんにのめり込んでいるみたい」

ひと際大きな目をして、カクは長いため息をつきながら、項垂れた。まったく、この子は!無垢な顔をして、時折、手酷い爆弾を差し出してくる。それでいて、自分は全くの無自覚なのだから、始末に置けない。
「・・・
そうやって彼女の名前を呼ぶと、彼女は少しだけびくり、とした。怯えているのか?なぜ?カクはそう思うけれど、これ以上が逃げないように肩をつかんだ。
「わしはのう、今までずーっと、自分だけがお前さんにのめり込んでおるとばかり思っておったわい。・・・なんじゃ嬉しいのう」
そうやって綻んだように笑うカク。次に目を大きくさせるのはだった。思いがけない言葉で、少しの間唖然とした。カクはその間も面白そうだった。少し嬉しそうで、今まで見た事無いようなそんな顔をしていた。
は少し俯いていた顔をいきなりあげて、カクがの肩に置いていた手を無理矢理握った。
「カクさん!」
そして少し大きな声で。
「な、なんじゃ?」
「買い物、いこう」
「買い物?」
「ケーキ、作ろう!」
「ケーキ」
「わたし下手だけど、一応お菓子屋さんでバイトしてたし、それに料理できないし」
料理できなくて、ケーキは作れるんか?とカクは頭の隅で思ったが、結局それは口にしない事にした。彼女がケーキを作ってくれると言う、そのチャンスをどうして自分から振るというのか!
「よし、行くぞ、
「うん、でもカクさん」
「なんじゃ?」
「・・・・・・期待しないでね」

少し俯いて言う彼女を、カクは愛しいと思った。つないだ手が少し恥ずかしいと笑う彼女も、今日も暑いねえ、と言う彼女も、数時間後にできあがったケーキが少し失敗して、ごめんなさい、という彼女も。









「ねえ、カクさん」「なんじゃ?」「お誕生日おめでとう」「ありがとう」
「大好きだよ」「・・・なんじゃ、急に」「カクさん顔真っ赤」「ちがう、これは、夕陽じゃ」「ここは部屋だよ」「・・・」
くすくすと笑う女と、顔を赤くして少し顔を隠す男。











大好きです、カクさん。1週間も遅れてだけど、ハッピーバースデー!(そして急いで書いたから、色々スルーしてほしい)
(06.08.16)