すらりと伸びた足、しなやかな腕、首には鈴を着け、黒の耳に、長い尻尾。黒猫。
本日の秘書は、いつも以上の露出だった。けれどいやらしくなく、リデルには一種の芸術のように見えた。けれどパウリーにとってはそれも関係ない。足と腕を存分に露出しているカリファの格好はハレンチ以外、なにものでもない。カリファが視界に入ると、いつも以上に顔を赤くさせて、わなわなとしだした。
「なっ、て、てめ、カリファ!お前、なんって格好してやがるんだ!ハレンチだぞ!!」
「セクハラです」
カリファの眼鏡がキラ、と乱反射する。パウリーの傍をするりと抜けて、それと同じように彼の言葉を上手くかわす。
「な、お、お、お前なんて歩くハレンチだ!」
「わー・・・!カリファさん可愛い!」
「ありがとう、リデル。リデルもとても似合っているわ」
後ろでわめいているパウリーの事は無視をする事にしたのか、カリファはパウリーの言葉には反応せずに、にこやかにリデルに言う。艶やかなその笑みに、リデルは思わずくらり、とした。同性であっても、惹かれるものは惹かれる。
「のう、カリファ。わし、こんなんでいいんか?」
怪我をしているわけでもないのに、上半身を包帯にぐるぐる巻きにされたカクがのそり、とやってくる。巻ききれていない包帯を頭から垂らして、不安げにカリファに聞く。
「あら、とっても素敵よ、カク」
カリファは巻ききれていない包帯をきゅっ、と止めてやり、にこやかに言った。その並んだ姿を見れば、まさにホラーの美男美女。
「嘘つけよ、これが素敵か!?」
「少なくともパウリーの猫耳よりはマシじゃのう」
「ね、猫耳だと・・・!ちっ、ちげーよ、これは狼だ!おい、リデル、いつまで笑っていやがる!!」
「わ、笑ってなんかいませんよ、ッ・・・」
リデルは思わぬ所で笑いのツボにきたのか、お腹を抱えてほんのお世辞ほどの「堪え」で笑っていた。瞳には涙を溜めつつあるのに、それでもリデルは笑っていないと言う。
「笑うな!」
「わ、笑ってなんかいませんって〜」
「笑ってるだろーが!!」
「まあ、パウリー。お前さんのかっこうを見て、笑うなという方が無理じゃて」
パウリーの肩にぽん、と慰めるように手を起きつつ、カクはぷくく、とわざとらしく笑った。パウリーはさっきよりも顔を赤くさせて手をわななかせた。
「ンだと・・・!お、俺だってなァ、好きでこんなカッコしてんじゃねェよ!」
『ポッポー、いい加減諦めたらどうだ』
突然後ろから声を出される。ポッポー、とわざわざ存在を主張させるように言う者なんて、このガレーラ、いやウォーターセブンでただ一人。
「ルッチ職、ちょ・・・」
振り返り、その者に呼びかけようとしたのだ、リデルは。けれど、声が喉でつっかえた。カリファはよく似合うわ、と微笑み、カクはほう、と感心し、パウリーはあんぐりと口を開けた。
『どうしたっポー』
彼の格好は吸血鬼伯爵、けれども間抜けな腹話術のスタイルはいっこうに変わらない。今にも若い娘の首に噛み付きそうになるほど凶暴さがあるけれど、黒のスーツとマントが紳士さを引き立てて、差し色の赤が艶めかしさを演出している。もちろん、肩に止まっている相棒も同じ格好だった。
「は、はまり役ですね、ルッチ職長・・・」
「なんというかのう、もう、まさに!ってかんじじゃ」
「な、なんでルッチばっかこーゆーかっこつけの格好なんだ!!」
「この役あてはアイスバーグさんによる独断と偏見です」
「・・・」
『行くぞ』
ルッチはミイラ男と狼男とピーター・パンにお菓子がたっぷり詰まった袋を渡し、マントを翻してブル乗り場へと行ってしまった。
パウリーはアイスバーグの名前が出て流石に諦めたのか、素直にそれを受け取り、肩を落としつつも、ルッチについていった。
それを、カクとリデルは気付かれないように顔を見合わせて笑う。

「夕方までには戻ってきてください」

黒猫の見送りで、ハロウィンは始まる。







(06.12.26)