聖夜である。
ここではないどこかでは、きらめくイルミネーションに、ごちそう、プレゼント、恋人たちは寄り添い合い、子どもはサンタに夢を膨らませているのだろう。
ここではないどこか、では。
凄惨な事になっているだろう。可哀想な事だ、この聖夜に血を見るなんて。いや、むしろ怖いほど合っているのかもしれない。聖夜に捧げられる血、なんて、
たちが悪い夢だと思いたいだろう。殺した方だって、そう思いたい。(こんな日ぐらい、ゆっくりしてたっていいじゃろ)
パチパチ。
入った部屋は、暗かった。ただ、暖炉の火があるだけ。季節を感じさせる為に、何日か前からがせっせと飾っていたツリーがでかでかと真ん中に置いて
あった。星だけは届かなかったようで、下に置いてあった。(こんな事をして、何になる?)(サンタクロースなどいないのに)
任務は終わった。全て。シャワーも浴びた、服も替えた(靴ですら)、後はこの疲れを癒すだけだった。それなのに。
(なんでわしはこんなところに来とるんじゃ)
主に仕事の打ち合せだけのために作られた大きな広間(つーか無駄じゃ、無駄。何を考えとるんじゃ、あのアホは。)はいつのまにかたまにメンバーが集まる唯一の場所になっていた。
けれどそこには誰も居なくて。
それもそのはず、今日は誰も帰ってこない。(CP9の聖夜はさながらサンタのように忙しい。)(まってく、上の無駄なロマンチストにはほとほと辟易する)今夜は自分も帰ってこないはずであった。けれど、最後のターゲットは予想外に昨日、交通事故で無くなっていた。(聖夜の前日とは、神も酷な事をする!)別に寄る所も無ければ、行きたい所も無かった。
「全く、あの給仕は何をやっとる」
ぶつぶつと、続けて小言を言おうと思っていた。思っていたが、それは口から出なかった。暖炉の前には大きなソファがある。中々座り心地のいい、赤いソファ。自分はそこに座ろうとしていた。けれど、それも無理だった。
ぐっすりと、が眠っていたからだった。呆れて言葉も出なかった。(仕事、しろ)
小さな(変な)寝息をたててたくさんのクッションに顔を埋めて、見るからに寝にくそうな格好で眠っていた。ブランケットは膝から落ちて、の白い膝はオレンジ色に染まっていた。
机の上には未だにスパークリングしているシャンパンが置いてあった。酔って寝てしまったのだろう。(独り酒とは寂しい奴じゃの、こいつも)
「・・・ハァ」
落ちていたブランケットを給仕に優しくかけてやるなどとは、カクにとってはまさに聖夜の奇跡、聖夜のきまぐれだった。
そんな滅多にしない事をした所為か、それともその時間がやってきたのか、はぱっちりと目を開けて、そしてカクの服を掴んだ。まさか起きるとは予想していなかった。だから、固まってしまったのも、無理は無いだろうとカクは思った。
「カク?」
「な、なんじゃ・・・」
「メリークリスマス」
ふにゃり、と寝ぼけた顔で笑って、もう一度、クッションに顔を沈めてしまった。どうやら寝ぼけていただけのようだったが、カクの服は掴んだままだった。
(勘弁してくれ!)
(お・・・おはようございます?)
(よーく寝とったの?)
(え、えっと、カクはいつからそこに・・・)
(8時間前じゃこのボケ!!)
(ご、ごめんなさいカク!ほんとっ!ごめんなさい!!)
給仕とクリスマス
この後カクは風邪をひきました。
(08/04/13)