ルッチは奇妙なものを発見した。奇妙というか、異質だった。
海軍本部に幼女など。
子供は辺りをきょろきょろとしながら、海軍本部の廊下を歩いていた。
誰のガキだ、不注意な。などと思いつつ、ルッチはため息をついて頭を抑えた。ルッチは子供が嫌いだった。脆弱な、感情を露にする子供が大嫌いだった。けれど、ここに居るという事は親が海軍の、しかも相当の地位を築いている者だという事は想像できた。
しかし、だ。それにしても服が質素だ。もしかして、どこかの給仕の娘かもしれない。
ルッチはまたため息をつく。それと同時に、ハットリが幼女の元へと飛んだ。
『小さなレディ、どうしたんだっポー』
「クザン、どこ?」
喋る鳩など珍しいはずなのに幼女にとってはどうでもいいらしかった。笑いもせず、驚きもせず、泣きもせず。幼女は驚くべき言葉を発した。
『・・・今、誰の名前を言ったんだっポー?』
ハットリが聞いても、幼女は答える事はしなかった。きっちりとその小さな口を結んで、開けようとはしなかった。
その頑固そうなところと、幼女の深い瞳を、ルッチはよく知っているような気がした。
カクは奇妙なもの発見した。奇妙というか、笑えた。(思わず顔が引きつった)
ルッチが幼い子供を片腕で抱いて、肩にはハットリがいつものように止まるなど。いったいどこの道化だ。
「・・・隠し子かの、ルッチ」
「バカヤロウ」
一蹴だ。冗談だったのに、とカクは肩をすくめてから、そのルッチが抱えている子供を覗き込む。可愛らしいが、愛想の無い子供だった。けれど、カクに驚いたのか、幼女は少しだけルッチの首にしがみついた。
「おやおや!驚かせてしまったかのう」
「お前の顔が怖いだと」
「失礼な、わしのどこが怖いんじゃ。可愛いじゃろ」
むしろルッチの方が怖い、といいかけて止めた。こんなところで暴れたら、この子の教育上よくないだろう。
「すまんかったの、お嬢ちゃん。お名前は?わしはカクじゃよ」
「」
幼女はポツリと自分の名前を告げた。その名前は、いつもの一緒に居る給仕と全く同じ。よく見ればこの頑固そうなきゅっと結ばれた口元も、髪の色も、その瞳も、どことなく似ているような気がする。
「・・・・・・の妹か?」
「はだよ?」
彼女の頭にはクエスチョンマークがたくさん出ていそうだ。こちらは二人して卒倒しそうなのに!(子供というのは無邪気で、時にとても残酷な可愛らしさと素直さを持っている)
とりあえず、どこかにこの厄介事を押し付ける事を決意した。
「可愛い子、と同じ名前なのね」
そう言いながら、カリファはの頭を優しく撫でる。微睡みかけていたにその行為は睡眠を助長させた。
結局カリファの元へを預ける事になった。CP9の中で誰が一番向いているかと言えば、彼女くらいなものだろうと思った故である。(そもそも給仕に預ければよかったが、その給仕が不在だったのである)ルッチもカクもようやく解放されると思って、ほっとした。(は騒ぐ事はしなかったが、その存在はプレッシャーだった)
「でも残念。わたし、これから仕事なの」
「なんじゃと!」
「今日はカクとルッチとジャブラだけね。がんばって親御さんを捜しなさい」
バタン、と目の前で閉められた扉の音と共に、解放される望みはあっさりと破られた。
「で、なんで俺様まで巻き込むんだ、ああ?化け猫」
「黙れ、負け犬」
「ああ!?やんのか、」
「止めんか!が起きる!」
カクの言う通りカクの腕の中で(ルッチが音を上げたからだ)(それで渋々代わる事になったのだ)はぐっすりと眠っていた。あどけない顔をしている。
半獣化していた二人はその顔を見て闘志を失ったのか、あっさりと元に戻った。
「一時休戦じゃの」
「ところで、はどうしたんだ」
「俺が思うに、」
カクの腕の中ですやすやと眠っている子どもを指差す。(人に指差すのは止めんか!とカクが小さな声を上げたが、ルッチは少しだけ眉根を顰めただけで、別にその手を下ろしたりはしなかった。)
「こいつがなんじゃねェのか?」
「・・・・・・・・おい、化け猫、お前ついに頭がおかしく」
「なってねぇよ、バカヤロウ」
俺もこんな事信じたくねぇ、といつもより格段不機嫌に言った。ジャブラが口をあんぐりと開けて、の寝顔をじっくりと見る。カクの腕で眠る、など普段からは考えられないそのシチュエーションに、カクの顔との顔を交互に見てから、へー、ほー、など腕を組んで、にやにやといやらしく笑う。
「・・・なんじゃ?」
「いや、似合ってんなあ、と思って」
「は?」
「ガキに、カク。いいじゃねぇか、こんだけ似合うんだから、カク一人で世話できるんじゃねぇか?」
なあ、化け猫。と、珍しくジャブラがルッチに同意を求め、ルッチもああ、確かに。とこれまた珍しく同意をしたため、満場一致。(カクにはを押し付けられた事よりも、ジャブラとルッチの意見があった事の方が驚きだった。)
決まった所でカクが気付いた時には二人は姿を消していて、残ったのはの少しの重みと寝息。
「・・・おい、ちょっと待て、わしがこいつの面倒を一人で見るんか!?」
時すでに遅し。誰もいない廊下に、カクの声が虚しく響いた。
・・・冷静に考えてみようか、わたし。
今日のお昼にクザンがやってきて、なんだか特別なクッキーだとかなんとか言って、その場で食べる事を強要させられた。きちんと咀嚼して、食べた。甘くておいしくて、でも、クザンに勧めても、彼は頑なに食べようとはしなかった。(あれがおかしかったんだ!)(だって、クザンが来ると、意地でもわたしとお茶をする)1時間ぐらいして、どこかがっかりした様子でクザンが帰っていって・・・。この辺りから記憶が無い。
そしていま、わたしはカクに膝枕をされている。
ええええ、もう頭が混乱して!おかしい!!(前わたしが風邪ひいた時よりも、いつぞやかの殺されかけた時よりも、心臓に悪い!)(ていうか、カクも寝て、る・・・?)
ほんの少し、頭を動かしただけでもカクが目覚めてしまうかもしれないという不安に駆られて、わたしはぴくりとも動けなかった。(カクの鼻が私の額にくっつきそうだったし!)下から見上げるカクの顔は、なんだかいつもと違っていて、新鮮だった。(睫毛が長いなあ)(羨ましい)丸く可愛らしい癖に、わたしにはほとんどと言っていいほど、優しさを見せないその目は、今はゆるりと閉じられていて、年相応の幼さが垣間見えた。(可愛い顔をしてるよね、うん。)(これでCP9のNO.2だなんて信じられない!)
ええと、とりあえずもう一回寝とこう。夢かもしれないし。
給仕に悪戯
ほんとに遅くなってすみません(ほんとに、本当に!)、一万打ヒット企画のペコ様リクエスト、『CP9でピクニック(ワルツ)もしくは性別が変わってしまう、小さくなってしまう。』でした。すみません、CP9というより、カクさんですね・・・orz でも楽しかったです、設定が無理矢理でごめんなさい(>_<)きっとお父さんは小さい娘と遊びたかったんです。ペコ様のみお持ち帰り可能です、ありがとうございました!
(08/04/13)